「備和との出会い」

— 山崎繊維工業株式会社:山崎 氏

「和紙」は現在考えうる最後の天然繊維だと認識しています。「和紙」とは自身の生きようとする力が様々な効能を生み出す高機能素材なのです。洋紙とは違い抄紙過程で生み出される和紙本来の通気性が最たる物ではないでしょうか。

「備和」は、和紙の特性を最大限に引き出すことに成功した糸です。もちろん、「備和」の開発にも計り知れない苦労があったと聞いております。備後撚糸さんの培ってきた技術、職人さん達の撚糸への思い、社長の熱意の賜物だと思っております。

紙糸は多くのニッターが一度は挑戦している素材ですが、これまで丸編として確立出来ている話は聞いたことがありませんでした、弊社もその中の1社に過ぎないニッターだったと思います。この糸に出会うまでは…
多くの紙糸を手にしてまず初めに感じることは、「硬さ」なのです。しかしこの硬さこそが紙糸の特徴の「シャリ感」を生み出す大事な要素なのです。
丸編機は何本もの糸を一気に機械に挿入して高速で編み立てることで生産性を上げるのが特徴なんですが、この「硬さ」が邪魔でした。

「備和」は和紙の持つ「シャリ感」を壊すことなく、糸に「粘り」と「しなやかさ」を持たせた今までにない紙糸なのです。この糸を使うことで今までは紙糸では編立が不可能だろうと考えられていた編み組織を編み立てる事が可能になりました。弊社としても「備和」を使いカットソーとして紙糸を世に広めたいと思います。
織物のもちろんですが、カットソーとしての紙糸の可能性を大きくした画期的な糸なのです。

山崎 氏

— 山崎繊維工業株式会社