備後撚糸さんが作る和紙糸(備和)の魅力

— (株)うるとらはまいデザイン事務所:浜井弘治 氏

備後撚糸さんの和紙素材の魅力は、日本人の知恵や技術を過去に終わらせる事ではなく、未来に向かっている事です。和紙は、知恵と機能の素材です。

そもそも、ひと言で紙と云いますが、洋紙と和紙では全く別モノです。洋紙は、まるでバインダーで固めた様な作り方をしますが、和紙は植物の繊維を生かす様に作られております。そして、洋紙は、印刷技術で発達した素材ですが、和紙は機能の素材です。日本家屋に和紙が多くあるのは、この機能のためです。これらはまるで、見えるモノを思考する西洋の美と、見えないモノも思考する東洋の美の見識の違いの様です。

それでは、なぜ、日本家屋に和紙が多く使われているかという機能を私なりの解釈で説明します。
一般的には、和紙が日本家屋に使われているのは、美意識としてですが、むしろ生活の知恵と機能として使われた素材です。それは、夏は高温多湿で冬は乾燥する、この日本の風土に適した素材だからです。和紙は湿気ある夏に水分を吸収し、乾燥期の冬に水分を吐き出します。このように和紙が呼吸する事で快適な空間を作っております。この発想を衣服内気候に置き換えたのが和紙糸素材であり、それを使った和紙のテキスタイルです。これらの機能で、和紙素材は、夏涼しくて冬暖かいです。和紙を木綿と比較すると、和紙は木綿の10倍の吸水性があります。そして木綿の3分の1の重量です。

最近、私自身も製作した和紙デニムと和紙ポリエステル鹿の子のポロシャツや、和紙ダンガリーのシャツを普段より着ておりますが、寒暖の厳しい時にも快適ですし、今時分の炎天下の夏にも、汗ばむ事なく快適です。そして、現代の日本は、どこに居てもエアコンがあり一見快適ですが、エアコンの効いた所に長く居ると乾燥します。水分を調節機能のある和紙素材は、これらを制御し快適です。また、これまでの天然素材で無かった新たな着心地を楽しんでおります。
そういう意味で、和紙素材は、言葉のイメージから太古の様でありますが、むしろ、未来の素材と云えると思います。

浜井弘治 氏

ファッションデザイナー。
Exhibitonでファッションのメカニズムをテーマとしたインスタレーションを発表。
残糸Tシャツ、残糸デニム、ステッチシャツ、バクテリアシャツ、ガラ紡デニム、和紙デニム、柿渋フライトジャケット、オーガニックコットンバッグ、スパッタリングジャケットなどのローテク+ハイテク製品を大量生産の中の一点ものをコンセプトにしたアパレル製品を展開する。

— (株)うるとらはまいデザイン事務所